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弁護士の小峰です。

本日も船橋の弁護士として時事問題を法的に分析したいと思います。

今回のテーマは今話題の人気デュオ「CHAGE and ASKA」のASKA(本名宮崎重明)容疑者(56)が覚せい剤取締法違反(所持)容疑で逮捕・勾留されている件についてです。
 

報道では,ASKA容疑者が容疑を否認したうえで、「暴力団の関係者から『アンナカ』と聞いてもらったものが残っていた。覚醒剤ではなく、アンナカだと思っていた」と供述して,故意を否認していることが分かりました。

アンナカって何だ?と思いますが,「安息香酸ナトリウムカフェイン(通称『アンナカ』)」は、眠気や疲労感を抑えるほか、頭痛の症状を和らげる効果がある薬品だそうですが,これ自体は違法薬物ではありません。

そこで,「アンナカだと思った」という弁解が通用するのでしょうか?

 

ポイント(これだけ読めばOK)①  薬物犯罪における故意は,覚せい剤である旨の明確な認識はなくても,覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物であるという認識で足りる。
② ASKA容疑者は,尿から覚せい剤自体が検出されていること,自宅から覚せい剤10回分程度とMDMAとみられる錠剤が発見されていること,覚せい剤の検査キットも見つかっていること,自宅机上にMDNAの粉及び粉末が付着したドライバーが見つかっていることなどの状況証拠からすると,故意が認定される可能性が高い。
③ ASKAが
アンナカだと認識する十分な証拠を出せれば別だが,ASKAに薬物を手渡した暴力団員を明らかにし,その暴力団員が「私がASKAにアンナカだと偽って覚せい剤を渡しました。」などと証言するわけがなく,弁解は無理だろう。
④ 
もっとも,栩内香澄美容疑者の自宅からは何も出ていないので,栩内容疑者の「ASKAがアンナカだと言うのでアンナカだと信じた」弁解は,ASKAが「アンナカだと栩内容疑者に説明した」という供述を維持する限り,通る可能性がある。


 

覚せい剤取締法違反における故意は?

 

覚せい剤取締法違反で有罪になるためには,

①客観的に,覚せい剤使用した事実

②主観的に,覚せい剤を使用した認識(故意)

を検察官は立証しなければなりません。

 

については,すでにASKA容疑者の尿から覚せい剤が検出されていますので,立証はできるでしょう。

問題はの故意について,ASKA容疑者が否認をしていることです。

 

覚せい剤取締法違反のような薬物事件の場合,故意は,覚せい剤である旨の明確な認識まではなくても,覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物であるという認識で足りるとされています。つまり明確に覚せい剤だという認識はなくても,ぼんやりとやばい薬だという認識だけで足りるのです。

 

ASKAは故意を免れない

 

ただ,ASKA容疑者は「アンナカだと思った」=適法な薬物だと思ったと供述していますので,検察官は,覚せい剤を含む違法な薬物であると認識していたと推認させる様々な間接事実を立証することになります。

 

・自宅から覚せい剤10回分程度とMDMAとみられる錠剤が発見されていること

→アンナカとは別の形状・効能なので,アンナカという適法なものではなく,覚せい剤かもしれないというぼやっとした認識はあったと推認される

・覚せい剤の検査キットも見つかっていること

→アンナカだと思っていたのであれば,こんなキットは所持していない。覚せい剤のような違法薬物だと思っていたからこそこんなキットと持っていた推認される。

・自宅机上にMDNAの粉及び粉末が付着したドライバーが見つかっていること

→アンナカであればドライバーで砕く必要は通常無い。ドライバーで砕いたことから少なくとも適法な薬物ではなく違法な薬物かもしれないという程度の認識はあったはず。

 

これらを総合的に判断すると,覚せい剤を含む違法な薬物であると認識していたと推認されると思います。

 

アンナカであるとの立証不可

仮にASKA容疑者が故意を否認するのであれば,アンナカの調達先の暴力団員の存在を特定して供述し,その暴力団員が法廷に出廷して「ASKA容疑者に渡したのは覚せい剤でしたが,アンナカだと言ってASKAに渡した」と証言してくれないと立証はできないでしょう。でも,暴力団員が出廷するということはその暴力団員が覚せい剤をASKAに譲り渡したことを自供するに等しく,そうすれば逮捕され有罪判決を受けることになります。そんな危険を暴力団員が犯すはずがないですね。ですので,立証は無理でしょう。

 

栩内容疑者は釈放される?

もっとも栩内容疑者は,ASKA容疑者と違って,その自宅から薬物や薬物検査キットが押収されておらず,ASKA容疑者の供述次第では無罪放免となる可能性があります。

つまり,ASKA容疑者が白い粉末を持参して飲ませたが,アンナカだと説明した,と栩内容疑者が証言し,それと同調する証言をASKA容疑者が最後まで矛盾無く供述できれば,栩内容疑者は嫌疑不十分で勾留満期日に釈放される可能性があります。

不合理な弁解の背景には薬物組織の影が

ASKAは初犯であれば有罪でもほぼ確実に執行猶予が付く事案。素直に罪を認め,薬物の入手ルートを含め全容を供述して,情状を良くすることも選択肢としてはありえる。上記のように薬物の認識を否認しても通らない可能性は高い。なぜ不合理ともいえる否認を続けるのであろうか?

薬物の入手ルートに薬物組織が関与している場合,組織が自らを守るために逮捕された薬物使用者に対して弁護士を派遣するケースがあります。ASKAのケースがそうかは分かりませんが,この種事案ではありえる話です。

同一又は別々の弁護士を逮捕勾留されている共犯者に派遣し,事実上の口裏合わせをさせることもありえます。また,各逮捕勾留者から捜査の進捗状況などを確認する狙いもあります。

つまり,ASKAが未だに否認したり,アンナカを使用したと供述したり,
栩内容疑者に対してアンナカとしか説明していないなどと供述していることは,必ずしもASKAの単独の判断ではないこともありえるということです。薬物組織に飲み込まれ,自由な供述もできずにもがき苦しんでいる可能性も0ではありません。


 

【コメント】
私もバンドをやっていますので,
CHAGE and ASKAは大好きなバンドの一つでした。今回の事は,逮捕自体,残念でなりません。ASKAさんには,またいつの日が復活してもらうことを願っています。