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弁護士の小峰です。

船橋の弁護士として、法律問題について解説します。

今回は、今話題の片山祐輔被告の保釈について、取り消されるか?保釈金は没収されるのか?について解説します。

【更新履歴】
初稿5月19日午後9時42分,最終更新5月27日 

 

ポイント(これだけ読めばOK)①  片山被告がこのまま行方をくらまそうとした場合や実際に真犯人を装ったメールを送ったことが証明された場合は、保釈が取り消される可能性が高い。→【new】20日,取り消された。
② 
保釈が取り消される場合は、保釈金である1000万円について、裁判所の決定によりその全部又は一部が没取される可能性が高い。【new】5月27日までに,東京地裁は600万円の没取を決定した。


パソコン遠隔操作事件のこれまで(報道)

(日刊スポーツ) 

パソコン遠隔操作事件の真犯人を名乗る人物から新たに報道機関などに送られたメールについて、捜査当局は公判中の元会社員片山祐輔被告(32)自身が送信したとみて調べていることが19日、捜査関係者への取材で分かった。

捜査関係者によると、片山被告が埋めたとみられるスマートフォンが東京都内の河川敷で見つかった。解析結果から、捜査当局は、片山被告がメール送信に関与したとの見方を強めている。

東京地検は保釈の取り消しを求めることも検討している。一方、片山被告の弁護側は19日、メールは真犯人からのものだとして、東京地検に公訴取り消しを申し立てた。

主任弁護人は19日、片山被告が午前に胃の検査を受ける予定の病院に姿を見せず、午前10時20分ごろからは電話連絡が取れない状態が続いていることを明らかにした。

 

メールは16日の片山被告の公判中に報道機関などに届いた。これに先立ち、保釈後に河川敷で不審な行動を取る片山被告を捜査員が目撃。被告がいた場所付近の土中からスマートフォンを発見した。メール送信にはタイマー機能などを利用した可能性がある。

「真犯人です。お久しぶりですね」と始まるメールが届いたのは16日午前11時40分ごろ。片山被告のパソコン(PC)を遠隔操作して、PC内の情報をもとに犯人に仕立てる細工をしたと説明していた。

片山被告は公判で「自分も第三者からPCを遠隔操作された被害者だ」と一貫して無罪を主張。片山被告は16日の会見で「(メールの内容は)信ぴょう性は高い。これで裁判を終わりにしてほしい」と訴えていた。

片山被告は、今年3月に保釈された。

 

保釈等の取り消しについて

 

刑事訴訟法は第96条で保釈の取り消しについて定めています。

 

第96条  裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。

  被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。

  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

  被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

  被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。

  被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。

 

片山被告のケースでも該当する可能性大

以上の要件を片山被告のケースに当てはめると
 

  被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。

→公判期日(5月22日)に出頭しない場合は該当する。

  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

→このまま行方がわからず連絡もつかない状態が続く場合、該当する。

  被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

→真犯人を装ったメールを片山被告が送信していた場合は該当する。

  被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。

→現時点では該当する情報はない。

  被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。

→裁判所が指定した住居とは別の場所へ逃げ隠れした場合は該当する。


よって,片山被告のケースでも保釈取り消しが認められる可能性は大きいと言えます。 

→【NEW】5月20日午前11時19分時点の報道では, 東京地裁は保釈取り消しを決定したとのことです。

保釈金は没収されるのか?→600万没取決定

 

保釈が取り消された場合、保釈金については、刑事訴訟法で

 



第96条 2項 
保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。
 

 

と規定されています。「没収」(ぼっしゅう)ではなく「没取」(ぼっしゅ。実務では「ぼっとり」と呼ばれることもある。)です。

この点,実務では,保釈取り消しと同時に保釈金の没取も決定されるのが通例です(一通の決定書で保釈取消と保釈金の没取を同時に行う)。ただし,保釈取り消しと没取の決定を別々のタイミングで行うことも法的には可能です。今回の片山被告のケースでは,保釈取り消し決定の後,別のタイミングで没取の決定がなされました。 

 

従って、納付済みの保釈金1000万円のうち、一部又は全部が没取される可能性があります。没取は裁判所の裁量により行われ、納付者の責任の有無や被告人の責任の軽重等によりケースバイケースに決められます。

今回は、自分で第三者になりすましてメールを送信して刑事裁判における真実発見を妨げようとした点、被告人の責任は重いですし、決定が出た段階では未だ被告人自らの口から犯行の自供がなされておりませんので、結構な金額が没取されたと推測されます。 

 

大体この高額の保釈金は,一部報道ではお母さんが出してくれたとのことです。

そうだとすると、保釈取消になり、保釈金は溶け、非常に最悪な事態に陥ってしまいますね・・。


→【new】5月27日までに,東京地裁は600万円の没取を決定しました。
全額没取されなかったのは,保釈金が母親が預金を切り崩して支出したものであることや,片山被告が自ら逃走を中止し,犯罪を自認し,収監にも素直に応じたことが評価されたものと思われます。

なお,今回のケースで無罪を信じて闘ってこられた弁護団の先生方に敬意を表しつつ,弁護士をやっているとこのようなことがありえることを改めて肝に銘じたいと思います。

 

以上、解説でした。